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■Lucyみさおの逃亡日記カラコルムハイウェイ編VOL19:いんしゃら!■
DATE:2005.08.12 カシュガル
REPORT&PHOTO:Lucyみさお
てっきり12時に発車するとばかり思っていた。
寝坊した私はあわててタクシーに飛び乗り、11時半に国際バスターミナルに転がり込んだ。
しかし何のこっちゃない。
12時にスタートしたのは各種の手続きで、バスはなかなか発車しない。

荷物は一個一個昔ながらの台秤で計量しバスの屋根に上げていく。
役人は乗客のパスポートをすべて預かりチェックする。
台秤を囲んで乗客やその関係者(家族とかね)が大きな輪になり、あちらこちらで男同士のハグや女が泣き出す別れのセレモニーが始まる。

国境を越えるということがそれほど大したことなんか。
それともこの地方の人は情が濃いんか。

私は、どこから見ても「払い下げ」ふう、50人乗り小さなポンコツ「いんたーなしょなる」バスの傍らで繰り広げられる深く賑やかな別れの儀式をすぐ目の前で眺めながら、座席指定のないこのバスのどこにどうやって座ろうか、そればかり考えていた。

途中ホテルに一泊、トータル二日、全行程291km、最高標高4730mのマウンテンロードバスの旅。
この標高とその他のドライブコンディションに耐えられるかどうか、ハッキリ言って自信はない。
もともと私の体の血中酸素濃度は95%まで落ちている。
高山病になればあっという間に90%を切るだろう。
その時の苦しさは私は充分に自分の体験から知っている。
今回の逃亡で、一番の気がかりがこれだった。

高山病のことだけは徹底的に情報収集した。
普段の仕事以上のエネルギーで情報を収集した結果わかったことは、この病気は体質的なモンが大きいらしく、予防なんちゅうのは、メシを食わない、水をしっかり飲む、酒は飲まない、まあそんなもん、ということだけだった。

酒は夕べ飲んだ。
水はトイレに行きたくなるから、朝からほとんど飲んでいない。
メシはさっきからパンをパクパク食っている。

万が一高山病になった時のために私は携帯用の酸素を用意していた。
ちょっと大きめのスプレー缶サイズのもの。
まあ何かあったって、これがあれば下山するまで意識は持つやろ。
気分を楽にしてくれる最高の必需品。
そしてそれは伊丹空港で没収された。

手続き開始から約一時間、やっとバスのドアが開く。
私はウィグル人の気のよさそうな乗客を全身を使って押しのけへしわけ助手席の後ろ、なかなかいい座席をゲットした。
ここなら高山病に


ま、なるときはなるがな。

腹をくくって窓の下でまだ続く別れの儀式を眺めていると、リュックを荷積みしてくれたオッサンが窓をたたいて料金を取立てに来た。そういやにっこり笑ったキリでチップを払っていなかった。
オッサンは4元を請求する。しかしこちとらポケットに小銭は3元しかない。
私はオッサンに3元を渡して後はひたすらニコニコ笑って結局その場をごまかした。

やがてオッサンがあきらめて向こうへ行き、役人にパスポートを返され、涙の別れを終えた乗客がバスに乗り込んだ現地時間13時10分。
「いんしゃら」の祈りとともにバスはスストに向けて出発した。

NO:20 守られそしてバスは進む

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