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■Lucyみさおの逃亡日記カラコルムハイウェイ編VOL22:入国審査■
DATE:2005.08.13 カラコルムハイウェイ
REPORT&PHOTO:Lucyみさお
国境前で中国最後の検問一回。    
   
天候にも恵まれ、ぽかぽかの日差しの中、何の問題もなく、あっけないほど簡単にバスは峠(国境)を越えパキスタンに入った。    
   
国境近くの検問所でパキスタン人達と日本人の私だけバスを下ろされ、国立公園の入園料約4ドルを支払う。    
パキスタンの検問所では英語が難なく通じる。    
検査官はハンサムで礼儀正しく、そして対応はめっちゃフレンドリー。    
この瞬間のヨロコビたるや!    
たった一カ所の峠を越えただけで、これほど変るもんなんか。    
   
バスは片側に断崖を見上げ、片側に断崖絶壁を見下げながら、蛇行する山道をフルスピードで下っていく。    
舗装していない、けれど、道路のコンディションは悪くない。    
ただ、ちょっとハンドルを切り損ねれば、断崖絶壁の彼方へ落ちるだけ。    
やがて夕方、現地時間の5時ごろバスはスストに到着した。    
   
   
飛行機と同じく、荷物を下ろすよりもまず先に、入国審査がある。    
バスの乗客はこぞって入国管理所へ入っていく。    
入国申請の用紙をもらい、それに必要事項を記入し提出する。    
   
私は審査用紙を壁にあて、立ったまま必要事項の記入を始めた。    
別に特別な項目は何もない。    
5分かそこらで記入を終え、さあ窓口へ行こうと、壁から離れ、回れ右をすると、そこにあごひげを長く伸ばした、一人の年老いたウィグルじいさんが立っていた。    
   
じいさんは黙ったまま、用紙を差し出し、自分を指差し、そして私を指差す。    
   
ペンかな?    
   
てっきり「記入用のペンを貸して欲しい」んや、と思った私は、逃亡中、常にシャツの襟に挟んでいる愛用のモンブランを差し出した。    
   
じいさんは手を横に振り、またさっきと同じ仕草を繰り返す。    
   
あ、もしかして。    
   
そして今度は、パスポートも一緒に差し出すじいさんを見て、私は確信した。    
   
このじいさん、字が書かれへんのや!    
   
私はオッケイと言って、じいさんの申請用紙とパスポートを受け取り、また回れ右をして壁をデスク代わりにじいさんの用紙に記入を始めた。    
じいさんのパスポートは二冊。一つはチャイナの、もう一つは、よくわからないけれど、通行証のようなものだ。    
   
   
じいさんの生年は1931年。    
死んだ父と同じ。    
父は生きている間一度も海外へ行くことはなかったけれど、もしも旅行に出かけていたら、多分、こんな感じだっただろう。    
   
生きてる間に行かれんかったからいうて、死んでから姿変えてこんなとこに出てくんなよ。    
   
そんな思いがふと頭をよぎり苦笑する。    
   
   
程なくして記入を終え、私は用紙とパスポートを片手に回れ右をした。    
するとそこには、じいさんの隣にもう一人のじいさんがパスポートと用紙を持ってニコニコと立っていた。    
   
再び私はオッケイと言ってそれを受け取り、また回れ右をして二人目の申請用紙に記入を始めた。    
   
今度はさっきより早く済んだ。    
私はまた用紙とパスポートを片手に回れ右をした。    
するとそこには、じいさんの隣に奥さんとおぼしきばあさんが、パスポートと用紙を持ってすまなそうに笑いながら立っていた。    

■文字の問題■    
   
カシュガルはウィグル人の人々の街です。    
彼らの多くはウィグル語を書き、話します。    
しかし、それ以外の言語は難しい。    
   
中国の出国審査でたった50人の出国に2時間も時間がかかったのはこのためでした。    
2名かそこらの審査官が、ウィグル人一人一人のカードを全部記入していたんです。    
   
ウィグル人が審査官にパスポートとカードを預け、後は名前を呼ばれるのだけをずっと待っていた理由がここで初めてわかりました。    
   
ちなみに、パキスタンでの入国審査は英語です。

NO:23 裏入国審査

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