*** Lucyみさおの逃亡日記 ***
Mr.TASAKIのスタンフォード大学訪問報告
西脇尚子のパリ・ペルージャ・ロンドン紀行
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【Lucyみさおの逃亡日記(15)】
=Make the money 前編=
DATE:2000.05.28in San Francisco
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


迎えに来た相棒が私の格好を見るなり3歩下がって本気ですか?と頬を引きつらせた日曜日の午前9時。とっとと腹くくらんかい!と相棒をキツクにらみ、片手に提灯、片手に凧、ナイロン製の絽の着物にリュックサックという出で立ちで車に乗り込みサンフランシスコへ向かう。
さあ、いくでえいくでえと叫ぶ私の傍らで無言でハンドルを握る相棒。
「なんやねん、やる気あんのんかいな?」
との問いに小声で答える、
「なんでオレがこんなことにつきあわなくっちゃいけないんですか?」
しかし今更後にはひけない。

事のおこりは一年前。
フィッシャーマンズワーフで大道芸人を見た私はそこに商売の原点を感じた。そしてもし今度訪れることがあれば必ず稼ぐ側になってやる!そう固く心に誓ったのだ。
そしてチャンスは訪れた。だからやる。相棒はいいとばっちりだが、酔っぱらって”手伝う”と口を滑らせたのだから仕方がない。
サンフランシスコジャイアンツの新しい球場が見えてきた。わくわくする。ここまで来たらやるしかない。相棒もようやくその気になりつつある。二人で
「Make The money!」(稼ぐでえ!)
と叫びながらフィッシャーマンズワーフへと向かう。

駐車場に車をおき、着物姿でまだ人通りの少ない通りを闊歩し場所を探す。何やらあちらこちらから視線を感じたがきっと気のせいだったのだろう。視線の方向に目を向けても誰もが顔を背けている。
ピアの近くの歩道に場所を決め、フリーペーパーを敷きなわばりを確保する。街灯に提灯と凧をつるし、筆と墨、そしてカードを並べて準備完了。サンプルを数枚作成しながら、道行く人の様子をうかがう。まだまだ人通りは少ない。
思いのほか風が強く、並べたサンプルは簡単に飛ばされてしまうため、相棒にセロテープを買ってきてもらうことにする。そこにいることに恥ずかしさも限界に達していた相棒は喜々として通りの向こうへ消えていった。

一人、歩道に座って折り鶴など折っていると、通りすがりの白人が
「Kimono!」(きものやんけ!)
と、叫んで袖を引っ張るわ、ガキ数人が歩道の前に車を止めて
「What's are you doing!!」(おねーちゃん何してんのー!うっひゃー!)
と、叫んで大声で笑いながら去ったかと思うとまた戻って来て同じ事を叫ぶわで、さすがの私もびびりそうになるがそんなことで怯むわけにはいかない。

いくつかの折り鶴を折りあげたころ、通りすがりのアベックが興味深そうに近づいてきた。チャンス到来、逃がしてたまるか!サンプルを見せて満面のお商売スマイルで話しかける。
「I'll make your name in KANJI」
(お名前漢字で書かしてもらいます)
「Kanji?」(カンジ?)
「Yes KANJI! one name one doller!」
(はい漢字です。1枚1ドル)
しかしその後が続かない。もどかしそうな顔をしながら去っていく女性にPleaseと言って折り鶴を渡すと彼女は満面の笑みでBeautful!!Thanksと言って恋人にそれを見せ帽子に1ドル紙幣を入れていった。折り鶴を折り、道行く人にお商売スマイルを向け、待つこと30分。漸く相棒が戻ってきた。だらしなくシャツの裾を出し、眼鏡にサングラスのカバーをかけて、堂々と私の横であぐらをかくその姿はどこから見てもポン引きそのもの。やっと腹を決めたようだ。
正午を過ぎだんだん人通りも多くなってきた。いよいよ商売開始!
合い言葉は
「 Make the money!」

(中編に続く)



【全然英語が話せない人の為のワンポイントレッスン】

ショッピングの時、欲しい物が無くて店を出る時は

「I'll come back later」

(あいるかんばっくれいたあ)
(訳:あとでまたくるわー)

と、笑顔で言う。

最初、この言葉の意味を額面どおりに受け取っていた私が何度落胆したかはいまさら言うまい。


石谷みさお(いしたにみさお)

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