| *** Lucyみさおの逃亡日記セブ編:Misao's cebu Report *** |
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【Misao's cebu Report(28)】
=I can't call= |
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DATE:2002.07.29 at Uptown
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム) |
本屋を出ると既に午後4時をまわっていた。Gen.Maxilon.Ave を東に進むと、だんだん風景が寂れてくる。通りの両側には、窓に中から新聞紙が貼らた空家のオフィスが沢山並んでいる。「FOR SALE」の文字が、既にセブの中心部から随分離れたことを気づかせた。
道路沿いのスモールショップの入り口には、あちらこちらに公衆電話が置かれている。どうやら国際電話もかけられるらしい。そういえば、一昨日日本に電話をしたきりだ。ホテルの国際電話はバカ高い。この際一度、ここで試してみるのもいいかもしれない。 公衆電話はガソリンスタンド奥の雑貨屋の入り口にあった。店員のオバチャンにカードを求めると、それはここには無いという。どうやら、スタンド中央のキャッシャーでしか取り扱っていないらしい。仕方が無いので来た道を戻ろうとすると、オバチャンがニコニコしながら「買ってきてあげる」という。しかし、見ず知らずのこのオバチャンにカード代100ペソを預けていいものか?もしトンズラされなくても、きっと後でチップを要求されるのだ。戸惑う私の前で手を「頂戴」の形にしたオバチャンがニコニコ笑っている。 「知らない人はまず疑ってかかる。」それが自分をトラブルから守る方法だ。旅の間は、常にどこかで緊張している。おまけに今日はずっと一人で歩き続けたせいで緊張の糸をピン!ときつく張り続けていた。限界が近づいていたのかもしれない。オバチャンの笑顔に緊張の糸は一瞬緩み、そのまま私は100ペソを彼女に預けた。後は野となれ山となれ。もしちゃんと買ってきてくれればメッケモン。ポケットから帰りのジープニー代にとっておいたコインを数枚取り出して、私はチップを用意した。 ほどなく、オバチャンは走って戻って来た。そしてニコニコ笑いながらカードを差し出す。私は「ありがとう」と言いながらカードを受け取り、そしてチップを差し出した。しかし、オバチャンはびっくりした様子で両手を振り「いらない」と言ってまた笑っている。おまけに、「電話の掛け方を教えましょうか?」「大丈夫?」「どこから来たの?」と次から次へと親切に世話を焼く。その姿に、さっきの自分の考えがものすごく恥ずかしくなって、とにかく「大丈夫、わかる」と言って、電話のボタンを押した。 「もしもし。」 「もしもし、どなたですか?」 「もしもし、母ちゃんや、もしもし。」 「・・・・もしもし、もしもし?どなたですか? 聞こえへん・・。」 「もしもし、母ちゃんやってば。もしもし。聞こえへんの?もしもし、もしもし。」 「・・・どなたですか?・・えっと・・あの・・あれ?・・・変な・・・。」 相手の声はよく聞こえる、けれど、相手にこちらの声は通じない。いくら大きな声を出しても通じない。仕方なく電話を切ってため息をついていると、その声に驚いたおばちゃんと、中央のキャッシャーのお兄ちゃんまで、私の傍にやってきた。 「あかんかったん?」 「わからんかったん?」 「相手の声は聞けた、でも、私の声はダメ。」 心配そうに話しかける二人に私は笑って事情を説明した。けれど、心の中は複雑だった。通じない電話に初めて日本とセブとの距離を感じた。朝から緊張していたせいもある、その糸が緩んだ瞬間だったせいもある。寂しさに、胸が締め付けられるような思いがした。 「ほな、もういっぺんトライしてみてみ!」 二人は一所懸命世話を焼いてくれる。なんでこの人達はこんなに親切で優しいのかわからない。これ以上ここにいると、緩んだ緊張の糸が解けて私は泣き出すかもしれない。しかし、オフィスまではまだ距離がある。ここで緊張を解くわけにはいかない。もう一度緊張の糸をピン!と張らなくてはいけない。私は帰らなくてはいけない。 「いい、また今度チャレンジするわ。どうもありがとう。」 親切な二人に笑って礼を言い、私はガソリンスタンドを後にした。今日はもう電話はかけるまい。オフィスまでもう少し。次の交差点を北へ曲がれば後は一本道だ。どこかでジープニーに飛び乗ろう。私はタオルで顔をぬぐい、目的の交差点目指して駆け出した。 石谷みさお(いしたにみさお) Lucyみさおの逃亡日記セブ編(29)へ ※この記事の著作権は 石谷みさおに属します。 本人に許可なく転載、転用等をすることを禁じます。 ※この記事に関するご意見ご感想、は info@livelovelink.com までお寄せ下さい。 |