*** Lucyみさおの逃亡日記セブ編:Misao's cebu Report ***
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【Misao's cebu Report(30)】
=Jealousy=
DATE:2002.07.29 at Japanese Restaurant
REPORT&PHOTO:石谷みさお(りぶらぶりんくドットコム)


日本食レストランで遅い夕食を摂る前に、まずはビール!と、言って、サンミゲルをぐびぐび飲んだ。ハンドルを握る相棒はもちろん飲むことはできない。恨めしそうな顔の奴の目の前で「はーおいしい!」と言って飲むビールは極上だ。
喉を潤したところで、地図をテーブルに広げて、今日一日のことを、相棒に話した。ジープニー、マーケット、路地、公園、ダウンタウン、アップタウン、本屋、そして公衆電話。話しても話してもまだ足りない、心地よい酔いも手伝って、私の話は止まらない。ラーメンを食いながら黙ってそれを聞いていた相棒は、私が漸く一段落し、うどんをすすり始めたのを見計らって、小さな声で話しはじめた。

「僕は間違ってたんかな。」
「何が?注文か?うどんがよかったんか?」
今さらうどんが良かったといっても、ゼッタイに半分こなどしてやるもんか。私は口いっぱいにうどんを流し込んだ。
「いや、そうじゃなくて。あのね、去年インドで、もし僕がお膳立てしなければ、あなたは今日みたいに一人で冒険できたんじゃないかと思って。 もしかしたら、いらんことしたんかな、と。今更ですけどね。」
相棒はそういって、複雑な顔で黙ってラーメンをすすり始めた。私は取られると思って口いっぱいに流し込んだうどんを漸く飲み込んで相棒に言った。
「それは違うやろ。インドがあったから、今日一人で歩けたんやで。」
インドは私に、強烈なインパクトを与えた。もしあの時、一人で放り出されていたら、恐らく私には強い拒絶反応が起こっただろう。しかし、この男の手配のおかげで、私は車の窓を通してそれを見る時間を与えられ、少しづつ、少しづつ、インドの空気に自分を慣らしていった。あの時はゆっくりと風景を観る余裕も、空気を感じる余裕もなかった。それでも私はその中で多くのことを考え、そして、得た。
今、セブでこうして落ち着いてゆっくり風景を観、空気を感じ、街の人の写真を撮り、そして触れ合いながら、一日中歩くことができたのは、インドでの経験があったからこそだ。

「つまり、あんたのおかげっちゅうこっちゃ。」
「そうですか。」
相棒は嬉しそうな顔をして、続けて言った。
「あなたが少しうらやましい。」
「はあ?」
私は両手で持ったおにぎりをほおばりながら、相棒の話を聞いた。
「僕は水曜日にここへ来て、そのほとんどをオフィスで過ごしている。今日だって、結局こんな時間です。もう夜の10時ですよ。セブに来ても、やってることは東京のオフィスとまるで変わらない。でもあなたは、その間にどんどん一人でこの街を楽しんでる。いろんな経験をしている。正直言って、少しね、うらやましいんです。」

考えてみれば、今までの逃亡はいつも相棒にとって経験のある場所ばかりだった。だからこそ、充分なテイクケアもしてもらえた。しかし、今回は互いに初めての場所だった。相棒は業務に追われていた。私は自由に動き回っていた。奴にしてみれば、自分が築いた人脈をフル活用して自由に遊びまわる私は小憎たらしかっただろう。
しかし、この男にこんなことを言われるなど、思いもしなかった。 うらやましがるのはいつも私と相場が決まっていた。今、立場がすっかり逆転している。こんなとき、いったいどう言えばいいのか、答え方を私は知らない。しかし、言われて悪い気はしない。実は少し(いやかなり)ウレシイ。大きな声で「うらやましいやろ!」と言いたいのをぐっとこらえて、私はおにぎりを口いっぱいにほおばった。

石谷みさお(いしたにみさお)


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