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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:21 あゆたや?■
「旅は道連れ。ちょっとお話しましょうよ。」
と、言いたいのをぐっとこらえて、向かいに座る男の子の様子をチラチラと覗き見る。大学生くらいかな?タイの男性(特にポリスマン)は精悍なオトコマエが多いけれど、彼など後3年もすれば。うふ。

三等列車に乗ってすぐ、偶然向かいあった彼にチケットを見せ、もう一度この列車であっているかを確認した。英語が話せない彼はにっこり笑って指で大きく丸を作る。その長〜い指と、何とも言えない笑顔に私はその瞬間から虜になった。

発車した後も、日差しに目を細めれば、ボディランゲージで「ブラインドを下ろそうか?」と聞いてくれる。ああもうたまらん。私はにっこり笑って、下ろしていいけど、ほんの少しだけは開けておいてね、とこれまたボディランゲージで伝え、窓の外を見るフリをしながらチラチラと彼の指先ばかり見ていた。

三等列車の客席はコンパートメント。いわゆる「向かいアイ」。
ひっきりなしにジュースや菓子を抱えた物売りのおばちゃんが行き来し、隣の高校生とおぼしき団体の一人は、昼間っからストローで隠してビールを飲んでいる。後部ではどこから見ても観光客の白人団体が、何やら声高に喋っている。

私と彼の座るこのコンパートメントだけは、何とも言えない、いい雰囲気が流れている。目を閉じて眠る彼の長い指を見つめてうっとりしていると、あっという間にアユタヤまであと10分となった。

列車はのんびりと、ある一つの駅に停車し、隣の高校生団体も、白人の観光客も、皆ぞろぞろと列車を降りる。

「え?もしかして、ここアユタヤ?」

時間的には、アユタヤ到着時刻とほとんど変らない。人がぞろぞろと下りるのはここが観光地であることに他ならない。え?ほんまに?アユタヤなん?え?どないしょ?ウチ、下りなあかんの?

一瞬のパニックにどうしていいかわからず、私は向かいで眠る彼の肩を両手でゆすって無理やり起こし、もう一度彼にチケットを見せて言った。

「あゆたや?!」

当初あっけにとられていた彼は、窓の外をそっと見て、ゆっくりと首をふる。そして、あの細く長く色っぽい指先でこういった。

「あと一つ」

ああ、もうとろけそう。

そして私は無事アユタヤに到着した。

NO:22 レンタルサイクル
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