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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:25 長かった一日■
アユタヤの地形はわかっている。たとえ今、私が迷子であろうとも、周囲の道をとことん走れば、どこかで駅へと続くあの広い道に出るはず。

時間はすでに午後3時。すっかり迷子になっていた私は、とにかく帰らねばならん!と、ひたすらアユタヤの周囲を通る大きな道路を自転車で走り続けた。

まだか!まだか!まだか!
汗とホコリでボロボロになりながら、やっと見つけたアユタヤ脱出への道に喜び、そのイキオイで間違って線路を超え、あやうくバンコックまで自転車で走りそうになる寸前にガソリンスタンドの店員にアユタヤ駅への道を教えられ、無事、駅に到着。足はカクカク、顔は日焼けでひりひりの状態で、16時30分発バンコック行きの列車に飛び乗った。

ああ、これで帰れる。

列車は夕方のラッシュアワーで超満員。ボロボロの身体で床に座り込みたいのをじっとこらえながら、とにかく無事バンコックに帰れることにほっとしていた。

バンコックについたらタクシーでとにかくホテルに戻ろう。熱いシャワーを浴びて、レストランで美味しいものを一杯食べよう。

一時間半、そんなことばかり考えているうちに、列車は無事ファランボーン駅に到着。私は一目散にタクシー乗り場へと向かった。

人ごみをすり抜け、言葉がわからないのをいいことに、順番を無視し、乗り場にやってきたタクシーのドアを開け、運転手に「タークシンのホテル、ボステルイン!」と言いながら、ホテルカードを見せる。

しかし!

なんと見事に乗車拒否。
運転手はホテルカードを返しながら、「知らん、知らん」と、手を横に振る。

なんじゃい!田舎モン!ええわい、タクシーはなんぼでもおるわい。

もう立っていることすらつらくて、それでもとにかくタクシーに乗ってホテルに帰ることだけを考え、2台目のタクシーのドアを開ける。今度こそは!

ケンモホロロの乗車拒否。

そう、ここはファランボーン。見るからに貧乏そうで、言葉の話せない、ワケワカラン小汚いオバハンを無理に乗せなくても、客はわんさかいる。

なるほど、そうか、そういうことか。
乗車拒否の理由を悟った私は、もう次こそは逃がすまいと、客を乗せて乗り場にやってきたタクシーにしがみつくようにして身体をもたれかけ、4人の客が降りた瞬間に後部座席に滑り込み、運転手にホテルカードを手渡した。

「どうゆうのうほてるぼすてるいん?」

運転手は同じようにカードを返しながら、「知らん知らん」と手を横に振る。しかし、ここで降りるわけにはいかない。とにかく近くまででも行ってもらわなくてはならない。咄嗟に私は、

「ホテルシャングリラ!」
と叫んだ。

「シャングリラ?」

「イエース!シャングリラ!」

ホテルボステルインは、世界的超有名超高級ホテルシャングリラへの道、シャングリラストリートにある。シャングリラまで行けば、歩いて2分。まさか、知らん運転手はおらんやろ。

「シャングリラ、うんうん」
「シャングリラ、そうそう」
「OK」
「メーター使うてや」

タクシーは無事私を乗せて出発し、途中渋滞に巻き込まれながらも、なぜか、ちゃんとホテルボステルインのドアまでたどり着いた。料金60バーツにチップを上乗せして支払っていると、昨日、白タクに私を紹介したドアマンがやってきてタクシーのドアを開ける。

「ただいま!アユタヤ行って来たで!」

彼にフロントのドアも開けてもらいながら、ホテルに戻ったことが本当に嬉しくて、まるで、子供が親に遠足の興奮を語るように、思わず、アユタヤに行って来たことを告げる。フロントで客引きをしていた、例の白タクのおっさんにも「あんたに教えてもろたとおり、電車でアユタヤ行って、自転車乗ってきたで!」と、笑って言った。おっさんはやけに嬉しそうに自転車に乗る真似をしながら、「おー、そうか、オマエチープやなあ」と言って笑う。

ひとしきりホテルスタッフと笑った後、部屋で熱いシャワーを浴びビールを飲んでから、レストランで食事をした。

給仕やドアマンが入れ替わり立ち代り、話しかけてくる。例の白タク絡みのドアマンは、実はマハチャイに住んでいて、私がとても面白かったというと、随分と喜んで、調子に乗り翌日のデートに誘って来た。

「明日はオレの車でドライブしようよ、タダやから、タダ!」

なんだかおかしくて、あははーと笑ってごまかしたが、とにかく、たった一人のさみしい食事は、フレンドリーなホテルスタッフのおかげで、とても楽しい食事になった。

その後、部屋に戻った私は、服を着たまま泥のような眠りに落ちた。

NO:26 たーりんちゃーん
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