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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:26 たーりんちゃーん■
あれあれあれー???

エキスプレスボートはトンブリーを通り越し次の駅へ。ああ、忘れていた。このボートは片側通行。タークシンの対岸にあたるトンブリーには停まらない。遠ざかるトンブリー駅になみだ目で手を振った後、次の駅で一番に飛び降り、タクシーを捕まえる。

人のよさそうな初老のオッサン。もちろん英語は通じない。

「たりんちゃん、ふろーてぃんぐまーけっと!」
「わはははは」
「たりんちゃん。どうゆうのう?ふろーてぃんぐまーけっと?」
「うはははは」

困ったときに笑いでごまかすのは私の得意技。このおっさんは本家本元の私相手に言葉が通じないのを笑いでごまかし倒そうとしている。しかし「うはははは」の笑いとともに、タクシーを 降ろされるわけにはいかない。この駅前には、これ一台しか停まっていないのだ。

私は後部座席から身を乗り出して、運転席の背もたれにしがみつき、おっさんの顔と自分の顔をぎりぎりまで近づけて、日本語と英語とタイ語で「たりんちゃん」と書かれたガイドブックを見せた。

しかしおっさんは読めない。文字が小さすぎるのだ。眼鏡をつけたりはずしたりしながらその文字を読もうとするおっさんの耳元で、何度も「たりんちゃん!」「たりんちゃん!」を繰り返す。もうこれほんまにアカンかも、と思った瞬間、オッサンは私一人を車内に残して、ガイドブック片手にタクシーを降り、一目散に走り出した。

ちょっと待ておっさん、ウチ運転できん。っちゅうか、今あんさん、キーついたまんまのタクシー、誰か知らん人来てそのままウチどっか連れて行ったらどないすんねん!ちょっとおっさーーーーーーーん。

タクシーの後部座席で唖然としていると、ほどなくしてオッサンはニコニコ顔で戻って来た。近くにタムロしていたバイクタクシーの運転手達にガイドブックを読んでもらっていたのだ。

「たーりんちゃーん。わはははは。」
オッサンはニコニコ顔でガイドブックを私に返す。
「いえす。たーりんちゃーん。」
「たーりんちゃーん。わはははは。」
「たーりんちゃーん。たーりんちゃーん。」

二人で「たーりんちゃーん」と言い合いながら、おっさんはうんうんとうなづいてタクシーを発車させた。しかし、メーターは使おうとしない。

「めーたーぷりーず!(おっさんメーター使うたりいな)」

私はまた運転席の背もたれから顔を出して、おっさんの耳元で大声で言った。

「うははははは。たーりんちゃーん。」

おっさんは素直にメーターのスイッチを入れ、私達二人は何度も「たーりんちゃーん」と言い合いながら、タリンチャン水上マーケットへと向かった。

NO:27 取材?
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