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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:30 きっとできる■
未明に雨音で目が覚めた。
雨季のタイに来て4日、ずっと好天だったが、昨日の午後から少し空はぐずついている。

今夜24時の便で帰国する。漢字をやるのは今日しかない。なんとか雨がやんでくれれば、と思いながら、寝返りをうった拍子に、ベッドの端に丸めてあった浴衣の帯がころころと転がった。

「まだ漢字してへんねん。」

昨日ボートツアーの後、カオサン通りを冷やかしながら、ふと思い立って相棒に電話をした。漢字をするための道具はすべて持ってきている。英語の通じないこの町で、英語の達者なポン引きはいらない。ただ、自分が腹をくくればいい。
しかし私は迷っていた。
”言葉が通じない””一人やし””看板もない”できない理由は驚くほどたやすく思いつく。しかしそんなもんは所詮「やらない」自分の弱さでしかないことも私は知っている。

「できそうなんですか?町は安全?」
「町は大丈夫。場所の見当もつけてある。でもなあ、英語通じへんねん。」
「関係ないですよ。あなたの英語なんかたかが知れている。浴衣とか、道具は持って行ってるんでしょう?」
「うん。」
「やるべきです。」

ホテルへ戻る途中、大きな色画用紙と、太字のマジックペンを買い、スナックで軽く飯を食った後、店員の兄ちゃんに、思い切り愛想をふりまき、ゴミの中から大きなダンボールをもらってホテルに戻った。

この4日間町を歩き回りながら、この町は充分に安全だと判断した。この町ならできる。一人でもきっとできる。英語で説明できるか?できるわい。多少間違ったとこでどうっちゅうことあるかい。いちゃもんつけられたら逃げたらええんや。

朝になったら、ホテルのスタッフにタイ語で看板を書いてもらおう。
だんだんと小さくなる雨音を聞きながら、たとえ雨でもその気になったらできんことはない、そうつぶやきながら私は、床に広がった帯を端から丁寧に丸め直し、畳んだ浴衣の上に置いてまた少し眠った。

NO:31 支度
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