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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:32 ちゃんちゃたんちゅうかんちい!■
スカーフで包んだ商売道具、ダンボールの看板、画板そして小さなバッグを、肩に両手にぶら下げ浴衣姿でロビーに下りる。スタッフの何とも言えない笑顔に見送られて、ほな行ってくるわと、ホテルを出た。テラスの椅子で煙草をふかしていた白タクのおっさんが、驚いて立ち上がり「オマエ、どこ行くねん?!」と聞いてくる。

漢字をする場所は、ホテルからわずか5〜6分。ここなら何かあった時走って逃げてくることが出来る。人ごみの中、下駄の音をカラコロならしながら、私は今日の「場所」であるロビンソンへと向かった。

昼時のロビンソン前には、ラッキーなことに、他の露天はまだ出ていない。いつも露天の場所は決まっていたような気はするけれどどうせ勝手に出しているのだろう。こっちが先に出してしまえば文句はあるまい。

横断歩道を渡って人がロビンソンへと流れてくる。その流れの真ん中、つまり横断歩道の目の前に、ダンボールを敷き私は、店開きの準備を始めた。少し風がきつい。ダンボールに画鋲でとめたサンプルが、ちょっとした隙に、すぐ風にあおられてはずれていく。

下駄を脱いで裸足になり、風にめくれる浴衣の裾はほったらかし。両手両足を使ってやっと店開きの準備を終えたところで、ガードマンがやってきた。「ここはあかんで」てなことを身振り手振りで言っている。

まさか?あかんって?そらかなわんわ。ウチ支度全部すましてしもたしここ追い出されたら、どこでやったらええのん?

一瞬あっけにとられていると、ガードマンはダンボールを持って横断歩道を少し横にそれた場所に持っていった。 どうやらここでやれ、ということらしい。なるほど確かに、人の流れのど真ん中に店開きしてしまっては、危なっかしいことこの上ない。

私は再び、ガードマンに移動させられた場所に店開きの支度をし、ようやく準備完了。
目の前に店を出していたフルーツ売りの兄ちゃんの、何ともいえない奇妙な視線を感じながら、下駄を脱いで裸足になり、浴衣の裾を整え、道路に敷いたダンボールの上に座った。

朝、ホテルのスタッフに教わった呼び込みの言葉を何度も何度も大学ノートで確認する。とにかく、声を出さなきゃ人はよってこない。何度も何度も呼び込みのせりふを言おうとしては、喉につかえて何も言えない。人通りはだんだんと多くなってきた。道行く人が奇妙な顔をして私を見ながら通り過ぎていく。このまま黙って座ってたら、ただのさらしもんや。 そんなんウチのプライドがゆるさへん。とにかく、ここまで来たらやるしかない。

私はもう一度、大学ノートを確認し、大声で言った。
「ちゃんちゃたんちゅうかんちい!」

NO:33 人生一路
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