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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:34 笑う門には福来る ■
彼女の名前はSAKUNKAN。
あまり英語が達者ではなく、アルファベットの筆跡もたどたどしい。それでも何やかんやと一生懸命に話しかけてくる。

普段は一つ向こうの通りにあるシルクの店で働いている。今日は、いつもここで靴下を売っているボーイフレンドの手伝いに来たらしい。

二人揃ってワケわからん英語でワケわからん会話を続けていると、そこそこ英語の達者な彼女の友人が来て、英語で、私が何をしているかを書いた大学ノートを読み、SAKUNKANにタイ語で説明。ようやく彼女は私のやっていることを理解した。

「ラッキーネームなの?」
「もちろん!ラッキーネームやで」

こうしてようやくファーストカスタマー獲得。

「咲君華」と書いたカードを彼女に差し出しながら、それぞれの漢字の持つ意味を説明する。それを彼女の友人が、タイ語で彼女に説明する。どうやら気に入った様子。彼女は20バーツを私に手渡し、また靴下を売りに戻った。

その後は、観光客や地元の学生らしい客を続々獲得。とはいっても、たいした数ではない。学生はカタカナの書ける人も結構いて、自分の名前をアルファベットではなく、カタカナで私の差し出すノートに書いてくれる。ある女性は車の窓から顔を出して、「いつまでいますか?」とたどたどしい日本語でたずねてくる。

うーん、いいかんじ。

数は少なくとも、大きな切れ目もなく、客は続く。やっと「帰りたい」という思いがなくなりかけたその時、アロハシャツに短パンを履いた中年のオッサンが私の前に立ち、ワケのワカランことをまくし立て始めた。

時には指差し、時には声たてて笑い、数分どころか二十分近くも私の前で、まくしたてていたろうか。オッサンが何を言っているのかは全くわからないが、その言葉に道行く人はくすくす笑い、あのフルーツ屋の兄ちゃんも奇妙な顔で笑っている。

おかげで客はまったく近寄らない。
このパフォーマンスを始めて4年、はじめて受けた営業妨害。

これが日本なら、大阪なら、昔とった杵柄、オッサンの首ねっこつかんで、おんどりゃええかげんにせんかい!と吉本新喜劇さながらに、すごんで脅して投げ飛ばすところを、いやいやいかん、ここで凶暴性を発揮しては、この後の商売にさしさわる、とぐっとこらえて、心臓に育毛剤をドバドバとふりかけながら私は背筋をピン!と伸ばしてオッサンを真正面から見据え、にこにこ笑ってそこに座り続けた。

笑う門には福来る。

やがてオッサンは、そろそろ言うことが無くなったのか、もしくは何を言ってもワケワカランと平気で笑っている私にあきれたのかこれまたワケのわからん捨て台詞を吐いて去っていった。

NO:35 不思議な注文
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