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■メールマガジン「Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編」に関して
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■Lucyみさおの逃亡日記タイ・バンコック編 NO:37 搭乗開始 ■
「完了!」
大きな声を出してバンザイをし、私はドレッサーの上に広げたスケッチもそのままに、ベッドに仰向けに倒れこんだ。
ザーザーと雨の音が聞こえる。仕事に熱中している間に、どうやら雨が降っていたらしい。
雨季のバンコック。この5日間は連日雨でも仕方ない、と覚悟してきた。しかし、私の旅は不思議なほど好天に恵まれていた。

私はベッドに大の字になって目を閉じ、ただじっと雨音を聞いた。頭の中をこの5日間の思い出が駆け巡る。 その片隅に、明日のミーティングのこと、そして日本を出国する時にかかったウィルスのことがひっかかっている。
帰国してからの段取り。画像の整理はどうしよう、執筆はどうしよう、そしてたちまち抱えた仕事やウィルスの処理はどうしよう。

こんなに心せわしない旅の終わりは初めてやな。
そう思うとなんだかおかしくなって一人でにんまりと笑った。

「とにかく帰ろ」
まるで日本の、それもどこか近くの場所から自宅に戻るような気分で私は荷物の整理をし、フロントに降りていった。

「これからどこへ?チェンナイへ行くの?」
チェックアウトの手続きをする私に、フロントの女性が尋ねた。この大荷物を見れば誰だってそう思うよなあ、と思いながら
「ううん。日本へ帰る。明日仕事があるからね。」
そう答えて私は精算を済ませ、空港に行くためタクシーの手配を頼んだ。フロントの女性は困った顔をしながら「いくら払えるの?」と聞く。どうやら私は随分とチープでケチな旅行者に思われていたらしい。苦笑いして、「なんぼがベストなん?」と聞き返すと、彼女は申し訳なさそうに「350バーツ」と返事をした。

「OK。ほな頼むわ」
と笑って言うと、そばにいたドアマンがさっと外に出て、5分もしないうちにタクシーをつかまえてきた。

ドアを開け、荷物を運んでくれたこのドアマンには、チェックインの時、「NO Thanks!」ときつい一言を言った。私は、この彼にあのとき渡せなかったチップを渡し、「じゃ、またね」と言ってタクシーに乗り込んだ。

一昨年、 インドからの帰国便で、深夜のバンコックを経由した。 あの時見た、なんだかわからない、キラキラ光るその何かの中を今、どしゃぶりの雨の中、私はタクシーに乗って走っている。

あれはこれやったんや。
私はこの中に5日間ずっとおったんや。

雨で、飛行機の離陸は遅れそうだ。既に24時をまわった深夜の搭乗口には、関空へ向かう日本人がわいわいがやがや、旅の疲れも見せずににぎやかに盛り上がっている。
そんなざわめきの中、私はもう、誰かと一緒に、にぎやかな旅をすることはないのかもしれない、と、ふと思った。もちろん、これからも旅を続けていけば、どこか旅の途中で会った人と一緒の旅を楽しみたくなるかもしれない、けれど。

当分は一人が気楽でええなあ。

やがて飛行機は、定刻を随分遅れて、やっと搭乗を開始した。

(終わり)
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