HOME > メールマガジンバックナンバー

■メールマガジン「Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編」に関して
■メールマガジンバックナンバー
■過去の逃亡日記
■ベトナム・ハノイ-サパ編PHOTOコレクション

■Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編 NO:8 ぐっすりおやすみ■
「ノミマスカ?!」
ソフトスリーパーの上段で、ウィスキーの瓶と紙コップを掲げてでっぷり太った男が日本語で話しかけてきた。
「のうさんくす、あいへあぶあびあ」
私は片手に持ったビールを掲げて彼に答えた。

「エイゴハハナセルデショ?」
「いえす、ばったありとう。」

その後彼は下段のベッドに降りてきて、次から次へとつまみを私に差し出した。テイクアウトのスモークされたらしき肉をがっつきながら「食え!チキン!食え!」と私に勧めるその様子が、まるで猪八戒のようで、さすがの私もクールを保つことができない。

この陽気な男は、結局、一緒にいたおとなしそうな男二人と私を巻き込み、気がつけば私達は、なぜ隣の個室から苦情が来ないのか不思議なほどの、にぎやかな宴会を始めていた。

彼らは台湾の観光会社に勤めるツアーコンダクター。今回は日本の阪急交通社の依頼でサパへ写真を撮りに行く。

でっぷり太った男はリーダー格で台湾人、私の上のベッドで早々に休みはじめた男は中国人、そして私の隣のベッドには、一番若い27歳のベトナム人。彼らの普段の会話は中国語。もちろん英語も達者だ。

ベトナム人の若い男はまるで使い走りのように、こまごまと動き回る。禁煙の車内で煙草を吸っていいか聞いて来い、なんて指示にもすぐに従い、いそいそと車掌のもとへ走る。
「同室の皆がよければ吸ってもいいよ。」こんな返事が返ってくるあたりなんともおかしい。私達は「福」と書かれた紙コップに水をいれた即席灰皿を真ん中に、太った男が空港の免税店で買ってきたらしきバブリーなカルティエの煙草をまわし呑む。

阪急交通社ネタをかなり飛躍させて小林一三の話をしようとして、結局説明できる英語力などないことに気付いたり、自分の商売を説明しようとして、結局それすら上手く伝わらなかったり。会話に窮したときには、げらげら笑って

「うぃあーふぉーかんとりいず!」
「Yes, four countries!」

で、ごまかす。

日本で飲んでいるとき、バツの悪い話や説明したくない話が出ると、いつもグラスを掲げ「かんぱーい」を繰り返す。酒席で困ったときのごまかし方など、万国共通たいしてかわらん。

「Good night!」

一時間程、アホ話を続けた後、紙コップに残ったウィスキーをぐっと飲み干し、太った男は突然上段のベッドに戻った。旅先の会話は度を越えてはならない。楽しみのうちに終えねばならない。この男はそれをよく知っている。その後電気を消して、私は若いベトナム人と、ちょっと甘い会話、彼の恋やロマンチックな場所の話を静かに楽しんだ後、手を伸ばせばすぐに届きそうな隣のベッドで、何の不安も持たず、そのまま眠った。

ラオカイ近く、窓の外が明るくなり、男たちがごそごそと身支度をする音で起きるまで、私は一度も目を覚ますことなくぐっすり眠った。

「ぐもーにん」
私はボサボサ頭をかき、よだれの後をぬぐいながら、隣のベッドの男に朝の挨拶をする。

「でぃぢゅへあぶあぐっすりーぷ?」
「No I couldn't sleep.」
彼はなんとも疲れきった目をして応えた。
どうやら同室の男三人はほとんど眠ることが出来なかったらしい。

やがて列車はラオカイに到着。
列車を降りたところで彼らと別れ、私は25リットルの登山リュックを背負い、カメラバッグを首から下げ、別れ際にもらったパン2本、ミネラルウォーター2本を両手で抱えて、サパへ向かうミニバスの乗り場を探した。


■旅先の会話■

乗り物に乗ったとき、ホテルで、お店で、旅には出会いがつきもの。
外国人同士の場合は大抵カタコトの英語で話しはできますし、現地の人との会話は、成立せずともボディランゲージで笑いをとることはできる。同じ日本人同士なら、思い切り日本語で会話を楽しめばいいと思います。

当初私は、これが本当に下手くそでした。
何を話せばいいかわからないし、言葉も不自由、相手のとまどう顔を見るくらいなら、黙ってどこまでもストイックにクールに、沈黙を続けるほうがラクチンだと思った。日本人と出会ったら、知らん顔して通り過ぎていました。

でも、昨年タイに行ったときから、この考えは180度変りました。一人旅で沈黙を守るっていうことは、それでなくても孤独な旅をより一層孤独にするし、情報だって仕入れられません。そして何よりも大切なこと、笑うっていうことができなくなるんです。

昨年タイに行ったとき、ホテルの給仕、ナローサが毎朝一人で朝食をとる私になんやかんやと話しかけてくれました。今以上に不細工な英語しか話せなかった私ですが、それでもこの朝のひと時は楽しく、いつも笑っていました。

それ以来、私は英語の不細工さなど意に介さず、相手が困ろうがどう思おうが、平気で話をしています。

同じ場所を旅するモノ同士が共有できる話題は、沢山あります。その人のバックボーンまで踏み込んで話をする必要もないし、延々と話しまくる必要もない。一言二言を何度かに分けて話をすれば、それだけで、不思議と旅は豊かになります。

英語(他の言葉でも)が話せるか、と聞かれたときは、どんなにカタコトしか話せなくても「いえす!」と応えましょう。「のう!」というのは、時として、「あんたと喋りたないねん。」という意味にとられる場合もあります。もちろん、喋りたくないと思う相手なら、どんなに言葉が達者でもにっこり笑って「のう、あいむそうりい。」と言えばいい。このへんを上手に使い分けるのも、大切なことだと思います。

NO:9 重要な質問



このメールマガジンに関するお問い合わせは、E-mailで、Lucyみさお misao@livelovelink.com
までご連絡下さい。

このメールマガジンによって第三者が受けた、いかなる損害についても、発行者は責任を負うものではありません。
著作権に関して明記されているものに関しては本人の許可なく転載、転用等をすることを禁じます。

このページはリンクフリーです。
よろしければこちらのバナーをご利用下さいませ。