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■メールマガジン「Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編」に関して
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■Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編 NO:17 一緒に?!■
ラオカイに戻り、ドしゃべりタランティーノ達、サパ滞在組みと別れた後、来た時に立ち寄ったレストランで、この後ハノイに戻るツアー客と共に夕食を摂る。と言ってもテーブルが同じワケではなく、私だけが、たった一人で丸テーブルに座り、ビールを飲み、フライドライスを食べながら、時折話しかけてくる店の男の子とバカ話をしていた。

周囲がグループで和気藹々となっている。たそがれ時のそんな一瞬は妙に物悲しい。けれど、自分が一人であることに代わりは無い。

ツアー客の多くは6時半の列車でハノイに戻る。
あと一時間もすれば発車の時間になる。

「あんた何時の電車なん?」
「九時半や」

ツアー客の一人が私に尋ね、そして肩をすくめる。

「どないすんの?」
「国境。見に行く」

私は真っ直ぐに国境に向かって(か、どうかわからないけれど)手を伸ばし答えた。

ラオカイには何もない。
あるのは中国との国境だけ。
それすらも午後五時で閉まっている。
それでも私は見たかった。 
決して望んだわけではないこのクソ遅い時間のチケットを、私は心から喜んでいた。

皆が列車に乗る頃、この店でバイクタクシーをチャーターし、国境を見に行こう。今、私の目の前で、日本製の煙草を不慣れな手つきで吸っているこの子もいい。安全な人をチャーターしてもらおう。今日はもう国境を越えることは出来ない。でも、そこにはきっと何かがあるはず。

私の心は弾んだ。狭い島国に生まれた身に、陸続きの国境など想像も出来ない。どんなんや?どんなんや?わくわくどきどきうきうきそわそわ。

「ちょっと!」

突然のかしましい声で現実に引き戻されると、そこには若いオーストラリア娘が立っていた。

「あなた、9時半のチケットっていってたわよね。」
「うん」
「私も同じなのよ。」
「うん」

ツアーの最中、一人で盛り上がっていたこのオーストラリア娘は、発音こそ美しけれど、オソロシイ程の早口で、こっちはポイントを聞き取り、単純な返事をするのが精一杯。家族か友達か知らないが、仲間と一緒にテーブル二つくっつけて、きゃあきゃあわあわあ食ってたヤツが、何の用があって、ウチに話しかけてくるねん?

「あのね、私の仲間は皆6時半のチケットなの。私だけ9時半なのよ。それでね、私は別にかまわないんだけど、ほら、あなただって早いほうがいいじゃない?チケットが2枚あって、手数料2ドル払えば、6時半にのに替えられるのよ。もちろん、無理にとはいわないわ。私は別にいいのよ。9時半でも。でもね、あなたが望むなら、私、チケット替えたらいいと思うの。あ、大丈夫よ。手数料の2ドルは私が払ってあげる。問題ないわ。ね、どうする?」
「何が言いたいの?」

言いたいことはなんとなくわかるが、その言い方があまりにもまだるっこしく、そして早口なので、私はもう一度彼女に尋ねた。

「いいのよ別に私は。ただ、あなただって早いほうがいいと思って。もちろんあなたが嫌なら全然構わないわ。あ、お金のことは心配しないで、私が払うから。私は平気よ。でもほら、あなた、これから9時半まで長いでしょう?大変じゃない?何か予定あるの?いいのよ私は。あなたがチケット替えたくないなら、ぜんぜん構わない。」

「あんた、チケット替えたいん?」

彼女の言いたいことはこうだ。。仲間と同じ列車でハノイに帰りたい。だからチケットを交換したい。でもそのためには2枚必要だから協力してほしい。

「あら!私は別にいいのよ。ただ、あなただって早いほうがいいかと思って。私は全然構わないの。いいのよ私は。全然平気。でもあなたが替えたいなら替えたらどう?私もチケット持ってるし。お金は大丈夫よ。気にしないで。私が払うわ。」

素直に「協力して」と、言えばいいものをこの若い娘はそうやって人にモノを頼むことを知らないようで、「私はいいのよ」を繰り返し、早口の英語で何度も私にまくしたてる。

なんで、こんな娘のために、国境の夢、あきらめなあかんねん。

うんうんと彼女の話を聞くフリをしながら、私の心は既に国境にあり、娘のことなど「勝手に喋っとけ」くらいにしか思っていなかった。

一向に煮え切らない私の態度を察してかどうか。
突然、彼女は早口のスピードを落とし、じっと私を見て、ゆっくりと話し始めた。

「もし...。」
もし?
「もしあなたが、チケットを替えないというのなら...。」
替えなんだら?
なんやねん。なんやねん、気色悪いなあ。はよ言えや!
「私、9時半まであなたと一緒にいるわ...。」
....。

げえええええええ!!!!!

やめて、それはやめて!ウチは国境見に行くねん、ここで可愛らしいバイクタクシー手配して、ライトアップされた(真っ暗かもしれんけど)国境見て、存分にたそがれたいねん。一人でじっくり、物思いにふけりたいねん。それが何の因果であんたみたいな難儀なおしゃべりと一緒に?

これが男なら「悪いけど遠慮したりいな」とドスを効かせて一発かますところを、なんせ相手はうら若き小娘。いったい、どうやって「それは嫌や」と言えばいいのかわからず、胸の叫びとは裏腹に口をモゴモゴさせていると、まるで彼女は腹を決めたかのように、しっかりとした口調で私を見据えてもう一度言った。

「あなたと一緒にいる!」

その瞬間、私はスンナリとチケットを彼女に差し出していた。
  
NO:18 ただいま!



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