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■Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編 NO:18 ただいま!■ |
朝四時のハノイはまだ暗い。
さてさて、ここからどうしたものか。 夜が明けるまで、駅で待つか、それともバイクタクシーでホテルに向かうか。 私は客待ちをしていた一台のバイクタクシーにホテルカードを見せ、ドライバーがオッケイと言うのを確認して30.000ドンで手打ちをし、バックシートにまたがった。 早朝のハノイは驚くほど暗く静かで人影一つない。 もし今ここで、このドライバーが変な気を起こしたらウチはイチコロやな。まあええ。命とられるわけやなし。 そんなことを考えていると、ほどなくしてバイクは真っ暗な通りの傍らで停まった。 あたりには何もない。 指示した行き先、ホテルクラシックファーストのネオンさえも。 やる気か? 私はへその真下からぎゅうっと押し上げる恐怖に顔を引きつらせ、あわててバイクから飛び降り、身構えた。 柔道は、高校生の時に授業で習った。 - 受身だけ。 ケンカは昔、かなりした。 - 掃除モップはここにない。 荷物さえ放り出せば、逃げ足は速い - バイクにかなうかどうか。 とっとと逃げればいいものを、戦闘的なこの性格がそれを許さない。 私はリュックを背負って、柔道の構えの姿勢を取りながら、ドライバーをきっと見据えて大声で怒鳴った。 「どこやねん?ここ!」 「どこって、ここやがな」 ドライバーはバイクにまたがったまま、私の渡したホテルカードのストリート名を指差す。 「どこにホテルがあるねん?!」 「けど、このストリートやで」 ドライバーの声はだんだん小さくなり、繰り返しホテルカードを指差す。 オッサンまさか、地図読まれへんのとちゃうやろな? 見てみい、ここ、真っ暗やんけ。 右も左もわからへん。どないすんねん?どないすんねん?どないすんねん? さっきまでの恐怖はすっかり消え、まったく見当違いの場所に連れてこられたことへの怒りがメラメラと湧き上がり、私はボリュームMAXで怒鳴った。 「連れて行けよ!ホテルクラシックファースト!」 「ここどこやねん?ちゃうやんけ!オッサンどこに連れてきとんねん?間違いかい?ウチのホテルはどこやねん?どないしてくれんねん!」 オッサンは今にも逃げ出しそうな悲しそうなすまなそうな顔をして何度も繰り返しホテルカードを指差す。 余程声が大きかったのかどうか。 私が怒鳴り散らしているところへ、一人のオッサンがやってきた。 「なんや〜どないしたんや〜?」 と言ったかどうか。ベトナム語はわからない。 ドライバーはオッサンにホテルカードを見せながら、なんやかんやと説明し、オッサンはそれにふんふん、とうなづく。どうやらこのオッサンに道案内を頼んだらしい。オッサンはホテルカードを受け取り、私について来いよ、というようにあごをしゃくりながら何かを言った。 どないなとせえ! 私はバイクタクシーのドライバーに約束の30.000ドンを渡し、真っ暗な町を見ず知らずのオッサンについて歩き始めた。 オッサンはだまっている。 時折、開店準備をしている屋台の兄ちゃんや、通りすがりのバイクに乗った兄ちゃんに何やら聞きながら、そしてまた歩く。そのスピードは速く、重いリュックを背負った私は小走りに息を切らせてその後ろをついていく。 いったいウチは何をしてんのやろ? ハノイで、こんな真っ暗な旧市街で、見ず知らずのオッサンと、なんで連れ添って歩いてるんやろ? それでも今は、このオッサンについていくしかないんや。 はぐれてたまるか。もしこのオッサンとはぐれたら、どこかの物陰に隠れて日が昇るまで脅えて震えてなアカン。 もしこのオッサンが突然襲いかかってきたら? もうええ。そんなマニアがここにおるとも思えん。 今はとにかく信じてついていくしかないんや。 ほどなくして、通りの向こうに、ぼんやりと小さな明かりが見えた。 オッサンはそこを指差してにっこり笑い、私は何度もオッサンにサンキューと言い、そして、その明かりの前で、オッサンに1ドルを手渡した。 「ただいま!」 私は思い切りドアをたたいて、レセプションに布団を敷いて寝ていたホテルクラシックファーストのスタッフをたたき起こした。 ■早朝にバイクタクシーに乗るということ■ 正直言って、怖いです。 特に女性の場合は、男性の抱える危険プラスアルファがある。 私はたまたまいい人に出会えましたが、もしどこかで何かが違っていたら、と思うと、今もやっぱりヒヤッとします。 深夜早朝などに到着した場合の対処はいろいろありますが、ホテルが決まっている場合は、お迎えを頼むのも手ですし駅で時間を潰すのも手です。 旅に慣れてくると、ちょっとした瞬間にふと気を抜いてしまうことがあります。危険というのは、この一瞬に突然訪れることが多い。 これは私の反省を込めて。 皆さんは決して真似をしないように。 NO:19 オペラハウス |
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