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■メールマガジン「Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編」に関して
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■Lucyみさおの逃亡日記番外編ベトナム・ハノイ-サパ編 NO:22 乙女のヨロコビ■
朝だというのに、随分と腹が減っていた。
昨日、食い逃げした食事の量があまりにも多すぎて、晩飯を食うのをすっかり忘れていた。
7時にバゲットのサンドイッチを頼んだ。
しかし、それが出てきたのは7時半。ほんまに、何を考えとんねん、と苦笑いをしながら、大きな口を開けてかぶりつく。
8時にはチェックアウトして空港に向かわなくてはならない。
荷物のパッキングはまだ済んでいない。

二人がけのテーブルの向かいには、スーツを着た若く聡明そうなアジア女性が座った。

「旅行なん?」

相席になって、言葉を交わさないのは失礼だ。
たとえ時間がなかろうと、サンドイッチに口をモゴモゴいわせていようと私は平気で声をかける。

「調査なのよ。」

彼女は、中国・ハノイ・ビルマ・カンボジアの古い史跡を調査するカンファレンスの一員だと言った。
最後の朝に、こんな女性と出会えるなんて。

「ハノイの後、アンコールに向かうの。あなた、アンコールへは行ったことある?」

彼女と思い切り話しをしたら、めちゃくちゃオモロイやろうな、と思いながらも、時間は刻々と過ぎていく。
7時50分。とりとめもない話をした後、彼女に、「ほな、気をつけて。アンコールはきっと素敵やで」と言って、私は残りのサンドイッチを口に押し込み席を立った。

部屋に戻って歯を磨き、乱雑に散らかった荷物をそのままリュックに突っ込み、また部屋を飛び出す。

「みーさーうぉー、みーさーうぉー。」

駆け足で階段を下りると、レセプションの女性スタッフがカウンター越しに何度も私の名前を呼んだ。昨夜、覚えたらしい。
チェックアウト以外に用はない。けれど何とも、嬉しいもの。

「おおきに、名前覚えてもらうんは嬉しいもんや。」

チェックアウトを済ませ、彼女や他のスタッフと軽口を交わしながら、タクシーを待っていると、マネージャーが何かを手に持って私を呼んだ。
 
「みさおさん、これは私からのプレゼント。バチャンの花瓶です。」
「おばあちゃんの??そんな大切な??」
「"バチャン"の花瓶です。ここにクラシックファーストの名前が入っています。」

茶色い包みを開けて彼が私に見せてくれたのは、陶器の町バチャンで作られた懐かしい風合の花瓶だった。上部に小さくHotel Classic 1とロゴが入っている。

え?ええのん?こんなん、ウチにだけ?いやん、かなわんわあ、そんな帰る前に言うてくれはったらお食事くらい。

マイセンス100%のマネージャーからの思いがけないプレゼントに、私はすっかり舞い上がっていた。その様子にニコニコしながら、彼は同じものを別の日本人女性客に、同じ台詞と共に差し出す。

うが。そういうことなのね。
このホテルはイタイケな乙女を喜ばせる術を充分に心得ている。 
  
NO:23 花瓶



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